[第3回 Foreign Affairsを読む会]
(2000/09/13)


第3回会合が9月13日に行われました。

テキストは”Japan Rising Sun?"楽観論と"Japan:A Setting Sun?"悲観論という対照的な論文でした。参加数は10名と菅野さんでFAを読む会の新記録。

進行は谷による両論文の要約、網倉さんの用意した検討の為の論点整理の説明のあと、参加者によるフリーディスカッションで2時間を終えました。

その後竹内先生の案内で一ツ橋大学院内を視察し、隣接の如水会館食事会で終了。

フリーディスカッションの中身は官、民、政治のどれが主導権を持って改革実施すれば成功するか?
改革の成功とは何か?成功を米国押し付けの世界標準(技術、金融、法律)ではかるのか?
人口構造でハンディーのある日本の新しい価値観は何か?
新しい価値観で成功を計れないか?
等‥。

示唆に富んだ討論会で終了しました。


一橋大学大学院国際企業研究科のロゴの前で、
竹内先生を囲んで。

真新しい研究科長室(Dean's Office)で。

谷幹事(中央)のもとでのディスカッション風景。
報告者 谷 正行(17期)

MBI同窓会の魅力は、「グローバルな視野と言う共通点を持ちながら、様々なビジネス分野で多様な経験をして来た人々の集まり」と言う所にある。今回の「FAを読む会」に参加して、改めてその感を強くした。

第3回「Foreign Affairsを読む会」は、9月13日、完成したばかりの学術総合センター内、一橋大学大学院のセミナールームで11名の参加を得て開催された。今回のテキストは、Foreign Affairs7/8月号の「Japan:A Rising Sun?」と「Japan:A Setting Sun?」と言う二つの論文であった。これら二つの論文は、海外で話題になっていると参加者の一人から紹介されたが、日本でも、評論家の竹村健一氏が朝のTV番組の中で、読むべき論文として紹介している。

当日の進行は、今回幹事の谷さんによるテキスト内容の紹介から始まったが、谷さんから二つの論文の完璧な翻訳の提供があった事もあり、参加者全員が十分な理解の元に議論を行なう事が出来た。また、いつもながらの網倉さんによる見事な論点整理も、活発な議論を生み出す元となった。

テキストの内容を紹介する余裕はないので、関心のある方は菅野さんか谷さんに連絡して、原文なり翻訳文なりを入手し読んで見て頂きたい。とは言っても、何も無しでは私の感想文も理解して頂けないと思うので、その限度でテキストの内容を紹介する。

二つの論文に共通した認識としてあるのは、過去の日本経済の仕組みであった、国家並びに金融機関、一部大企業主導による経済体制から、市場主導の経済体制に転換出来るかどうかが、日本の将来を決定すると言う事である。日本を「Rising Sun」とみる論者は、日本の再生迄には未だ時間はかかるが、日本型「ビッグバン」を契機として日本は着実に変わりつつあるとし、最近の銀行合併の動き等を大きな改革の兆しとして評価している。一方、「Setting Sun」と見る論者は、改革は見せかけで本質的な変化は起きていず、依然として既得権保護の流れは変わっていないとし、財政赤字が膨らむばかりの日本経済に将来はないとしている。

二つの論文は、いずれも日本の現状を良く把握しており、事実認識は的確と評価出来る。バブル崩壊以降あまりに時間を浪費したとは言え、金融構造、労働環境など、ここ数年、かってなかったような大きな変化が起きている事は事実である。一方、政治や社会の様々な局面で、改革を妨げ、既得権保護を続ける動きが見られる事も否定出来ない。IT革命にも後押しされて、金融、経済のグローバル化が進むのに対し、政治とそのベースにある国民意識の変化は遅い。日本の社会構造が、そう簡単にアングロサクソン型市場経済体制に適したものに変わる事は無いだろうし、そうしなければならないとも思われない。優勝劣敗を当然とする市場経済体制は貧富の格差拡大を生み出すが、そのような社会が安定性を維持する為にはそれなりの社会システムを持っている事が前提である。グローバル化の波を避けて通れない事は確かであり、既得権構造の大胆な破壊も必要と思うが、一方で日本人の価値観に相応しい改革により、明るい未来を築く事は出来ないのであろうか。参加者全員が悲観論には組みたくないとしたのは、当然の事であろう。

当日の議論で面白かったのは、議論が「どちらの見方が正しいのか」とか「日本の将来はどうなる」とか言う様なありきたりの方向を向くのではなく、より本質的な問題に向かった事にある。

まず、問題にされたのは、何を以ってRising或いはSettingと言うのか、そして、日本は何を目指すべきなのかと言う問題であった。GDPの規模並びにその成長性なのか、「国力」なのか、一人当たりGDPなのか或いは国民の「幸せ」の増大なのか。この二つの論文は、GDP或いは「国力」の増大を問題にしていると見られるが、果たしてそれがこれからの日本が目指すものなのか。GDPの伸びは人口増加率、より具体的には労働力の増加率と生産性上昇率によって規定される。従って、移民労働力を大量に受け入れるならともかく、現状ではその成長性に大きな期待は持てない。今後、中国を始めとする途上国と日本との経済規模格差は確実に縮小して行く事は間違いなく、その意味での国際的地位は低下していかざるを得まい。経済力だけを頼りにした日本の外交戦略は、早い段階で見直していく必要が感じられる。結論を出すのが目的ではないので詰めた議論はしなかったが、参加者の多くはアメリカ型の社会に抵抗感を抱いているように感じられた。

次いで議論は、グローバル化が進行する中での日本企業を巡る環境変化の問題に移った。製造業に携わる人からは、空洞化の現実が紹介され、我が国の強みと言われた部品製造或いは製造技術や品質についての懸念が表明された。また、会計制度の国際標準化が日本企業の行動規準を大きく変える事になるだろうとの意見が出され、大方の賛同を得られた。グローバル化は先進国のみ利する、として途上国からの批判が強いが、先進国の一つである我が国には様々な影響を与えそうである。

時間の制約もあり、議論はそれ程深いものとはならなかったが、参加者全員が活発に発言し、実り多いものであった。欲を言えば、現在我が国でも進行している市場経済化とその問題点並びに目指すべき方向性にまで議論が進めば、なお良かったような気がする。

今回の議論に参加して感じたのは、国家、企業、国民それぞれが現在の環境下で何を目指すべきなのかをハッキリと意識し、行動する事が重要になって来ているという事だ。戦後の復興から高度成長期の様に、国家、企業、国民の利害が完全に一致する時代は終わった。

国家は国民の幸せの追求の為に、何を目指し、何をするのかを明確にしなければならない。資本の国籍を問わず、企業に対し魅力ある投資機会を作り出す事は国民の幸せに繋がろう。幅広い国民の利益を考えれば、痛みを伴う既得権益の打破も避けて通れまい。GDPの成長は唯一無二の目標ではなく、国民の幸せ向上のための中間目標ではなかろうか。

企業は、IT革命とグローバル化の進行の中で競争力確保に全力をあげるしかない。過去のしがらみや古い慣行は勿論、過去の成功体験も大胆に破却し、時代に適合した行動をとる必要に迫られている。もはや資本に国境はない。そんな時代に国家を当てにする事は出来ず、国家との利害不一致が起きる事も当然と覚悟する必要があろう。

国民は、金融、経済を中心にグローバル化が進む環境下で、どのような社会を作っていきたいのかを明確にする必要があろう。政治家や官僚の批判をし、自分は何も考えなくてもそれなりに幸せになって行った 時代は終わったのだろう。アメリカ型の社会を作るのか、日本特有の社会を作るのか。その場合起きてくる様々な軋轢や利害得失をどうするのか、簡単な事ではなさそうだ。

会の終了後、一橋大学大学院国際企業戦略科研究科長をされている竹内先生のご案内で、豪華なDean*s Room、カンファタブルな先生の研究室を始め、大学院内を見学する事が出来た。国立大学と言うイメージから来る古臭さとは180度異なる素晴らしい教育環境に、一同感嘆。皆さんの税金で出来たと、先生は再三強調されたが、それも良いのではないかと思う。アメリカ型の寄付に依存する仕組みと、日本のように国家が徴収した税金に依存する仕組みのどちらが良いかは一概には言えない。ただ、日本型の場合、チェックシステムの構築と大胆な投資も行なえる仕組みの構築が不可欠であろう。

以上

報告者 小川 哲夫 (7期)

第1回の参加者数は5名、第2回は7名、そして第3回は11名と、参加者数が段々増えています。内容・ディスカッションとも大変活発で、充実したものです。私はいつも聞き役ですが、皆さんのお話を聞くだけでもとてもタメになります。

初めて参加された方が、「このような刺激的なディスカッションはMBI仲間以外ではなかなか出来ない」と、この会を大変高く評価されていました。

この会を提案した網倉さんに感謝。

次回は来年の1月で、幹事は13期の松原さんです。

まだまだ先ですが、まだ参加されていない方、是非一度は参加してみる価値がありますよ。

菅野(MBI)
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