【第30回 Foreign Affairs 研究会報告】
(2014/12/26)
2014年12月26日午後6時から、学士会館の会議室において、第30回のForeign Affairs(FA)研究会が開催され、13名が参加されました。論文は米外交問題評議会会長のリチャード・ハース氏による「The Unraveling -- How to Respond to a Disordered World」(崩壊し始めている世界秩序)でした。(内容の詳細は下を参照)

今回は、小川哲夫さん(7期)がレポーターとなり、難しい英語の論文を分かりやすく翻訳、参考資料までつけて、丁寧に解説していただきました。


論文を解説する小川さん


FA研究会のあと、FA研究会の発起人で多大な貢献者であった網倉さん亡きあと、今後どうすべきか話し合いました。全員、今後も可能な限り続けたいとの希望があり、小川さんにはご負担をおかけしますが、来年以降も40回に向け、FA研究会は可能な限り継続することになりました。


FA研究会風景


但し、このように変化が早い世界の動きの中で、年1回では足りないのではないかとの意見があり、可能であれば年2回開催することになりました。そのうちの1回は小川さんにご担当いただき、もう1回は、他のメンバー、あるいはゲストにスピーカーになっていただき、世界の各地域についての研究にしてはどうか、ということになりました。
もしMBIの皆さん、あるいはお知り合いの方で、海外の国々について詳しい方がいらっしゃいましたら、ご紹介ください。

以上の話し合いのあと、引き続き同じ会場で忘年会があり、美味しい中華料理で歓談し、午後9時半頃お開きとなりました。小川さん、いつも翻訳等、ありがとうございました。

報告者 菅野妙子(MBI)


第30回Foreign Affairs研究会のテーマとして取り上げた論文は「The Unraveling(崩壊し始めている世界秩序)」(Foreign Affairs誌 2014年11月/12月号)で、著者は米外交問題評議会(超党派のシンクタンク)の会長Richard Haass氏で、内容は以下のとおりです。


レポーターを務める小川さん


米国の卓越性を前提とした冷戦後の世界の秩序は崩壊し始めている。その理由としては、@世界の中での力が数多くの、そして広範囲にわたる勢力に拡散してきているという構造的な要因、Aアメリカの経済、政治モデルへの尊敬の度合いの減少、B特定の米国の政治選択、特に中東における米国の政治選択が、アメリカ人の判断、米国の脅しや約束への信頼性に疑念を持たせるようになって来ていることが挙げられる。

秩序破壊を起こしている地域の中で最も問題なのは中東である。数年のうちに中東の大部分では、自らの領土内の広い地域で治安を維持できない国が続出し、市民戦争と国家間の衝突が頻発する状況になっている可能性が高い。一方、ヨーロッパの周辺部では、ロシアがソビエト復活計画とも見られるような動きをしている。しかし、ロシアのハードとソフトの力は限られており、また、他国との相互依存関係もあるので、ロシアが起こすことが出来る地政学的なトラブルはヨーロッパの周辺部に止まるだろう。

一方アジアでの問題は、現在不安定な状況が起きているというよりは、その可能性が増しているということであり、経済的な相互依存関係が紛争のブレーキ役を果たしている。しかし、湧き上がるナショナリズムや急上昇する不信感から生じる対決の危険を軽減するのに役立つ組織的な緩衝機構を作り出すための外交や、創造的な政策決定を実現するのには、なお時間を要するだろう。


FA研究会風景












事態をこのまま放置しておいたまま世界の騒乱が自然に解決に向かう事はない。中国が成長していると言っても様々な問題を抱えており、米国の指導力は衰えていると言ってもバトンを引き継ごうと待っている国はない。このままでは、最も実現しそうな将来の姿は、現在の国際的な仕組みが無秩序な仕組みに道を譲る姿である。米国が、より賢明で建設的な政策選択をしなければ、悪い状態は更に悪い状態へと簡単に移行してしまうだろう。アメリカ国民の大多数が、アメリカが世界のリーダーシップを取る事は勿論、グローバルな問題に関与する事自体に懐疑的な気持ちを強めて来ている事を理解している。

しかし、好むと好まざるとに関わらず世界はなお重要であり、米国は国内の福祉を傷つけることなく活発な外交政策を続ける能力を持っている。世界が安定していると言う事は、国内政策をより良いものにするためにも重要であり、一方、国内政策を上手く進める事で、アメリカがグローバルな指導力を発揮する基盤が準備される事になる。アメリカは世界を作り変えようとするのではなく、世界秩序を再構築するような外交政策を推進する事が必要だ。

しかし、アメリカが望ましい外交政策を推進したとしても更なる国際秩序の劣化を防ぐには十分ではない。秩序の衰えは、米国の認識、行動によっても起きているが、より広範囲にわたる力の分散、意思決定場所の分散化の進展が原因となっている部分も同程度ある。いま問題となるのは、世界秩序が破壊され続けるかどうかではなく、それが如何に早く、如何に深く進行するかなのだ。

以上のように、著者は世界を俯瞰し、冷戦後の世界秩序が崩れて始めている状況を冷静に分析し、米国の政策の失敗、オバマ大統領の政策の間違いを指摘し、米国が採るべき政策を地域別に、具体的に提案しています。この論文は主として米国の政治家、政策担当者、有識者向けに書かれたものですが、こうした分析、提案を読む日本人として考える事は、中国が強大化しつつある力を前面に出し始めている中で日本はどうすべきかと言う事です。今回の研究会で、11月に日本経済新聞の「経済教室」に冷戦終結25年をテーマとして2日間に亘って掲載された2人の政治学者の論文を紹介しました。二人は、日本はどうすべきかに関し日米同盟の維持強化を訴えており、一人は、日米同盟の役割が地域の安定化から日本の領土防衛や抑止に重点が移ってきていると主張しています。戦後70年、冷戦終結後25年。歴史に学ぶのは当然必要な事ですが、将来の姿を見据え、環境の変化に合わせて考えや行動を変化させて行く事も重要なのではないでしょうか。


第30回FA研究会・忘年会参加者


報告者 小川哲夫(7期)