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【第35回 Foreign Affairs 研究会報告】
(2017/12/26)

2017年12月26日午後6時から、学士会館の会議室において、第35回のForeign Affairs(FA)研究会が開催され、12名が参加されました。

今回は『Foreign Affairs』誌の7/8月号から、「Why Globalization Stalled and How to Restart It」(何故グローバル化は立ち往生したのか、そして、どのようにして再出発させるか)の論文が取り上げられ、今回も小川哲夫さん(7期)がレポーターとなり、難しい英語の論文を分かりやすく翻訳していただき、丁寧に解説してくださいました。



論文を解説する小川さん


内容の詳細は下の小川さんの報告を参照していただきたいのですが、戦後の世界経済発展に大きな役割を果たしてきたグローバル化の進行が停滞する中で、「America First」を唱えるトランプ大統領の誕生、英国のEU離脱の他、ヨーロッパ各国で見られる内向き指向の要因を分析し、依然として世界経済にとって望ましいと考えるグローバル化を進行させるにはどうしたら良いのかを論じたものです。ディスカッションではグローバル化の話から中国の戦略、日本の医療費・介護の将来まで幅広く話し合われました。



FA研究会風景



FA研究会風景


FA研究会のあと同じ場所で忘年会を兼ねた食事会がありました。忘年会では自動車免許証の更新における認知症検査や、健康長寿になるためには野菜を先に食べるのがいいなど、皆さんが身近に感じる話題に集中しました。

 

乾杯スピーチする川内さん


次はFA研究会主催でロシアの専門家を招いてロシアについての特別講演会はどうか、ということになりました。来年5月か6月に企画したいと思いますので、ご期待ください。

美味しい中華料理での歓談は続き、午後9時頃お開きとなりました。小川さん、いつも翻訳等、ありがとうございました。




皆さんで乾杯


報告者 菅野妙子(MBI)



第35回FA研究会のテーマとした論文「Why Globalization Stalled(何故グローバル化は立ち往生したのか)」の概要を、当日のレポーターとして以下のように取りまとめました。論文はグローバル化の現状と課題を幅広い観点から整理していますので、興味のある方は全文をお読みください。





第二次大戦後、国際機関による支援を背景とした、物、サービス、人、資本、情報などの国境を超えた移動の自由化、いわゆるグローバル化の進展は世界の多くの国々に支持され、結果として世界の人々の生活水準改善、何億人もの人々の貧困からの脱出に寄与した。しかし、今日では、自由貿易と国境をまたいだ無制限な資本移動は大衆の激しい反発を招き、自由な情報流通はプライバシーの権利、知的財産の保護、サイバーセキュリティ―確保の要請とぶつかってしまっており、人の移動に関しても、移民、難民の受け入れに対する反発が激しくなっている。





こうした中で、2016年に英国がEU離脱を投票で決め、米国ではトランプ大統領が誕生してアメリカ・ファースト″を誓い、TPPから離脱、NAFTAの再交渉を進めている。これまで米国が主導して作り上げてきた国際的な秩序を促進する事に米国自身が興味を失うに従い、グローバル化の将来はその多くを中国に依存する事になろう。しかし、中国が米国に代わる役割を果たすのには未だ荷が重いと言わざるを得ない。

米国では製造業の仕事の減少スピードが今世紀の初めに急加速し、2000年から今日までの間に600万人ないし700万人分減少した。仕事を失った人々が得た仕事は中位ないし低スキルの仕事であり、結果として賃金水準は低下した。自動化の進行によりブルーカラーの仕事とある種の低賃金のホワイトカラーの仕事は減少し続けているが、最近のセンサー類、機械学習や人工知能の画期的進歩により、さらに多くの仕事が不安定なものとなってきている。殆どあらゆる先進国において中所得の仕事が減少し続ける一方、低所得と高所得の仕事は増加し続けている。






こうした流れに対する対応状況は国によって様々だ。デンマーク、ドイツ、スウェーデンなどの国々では、税制、社会保障やその他のセーフティーネットを通じて富の再分配を図り、教育や職業訓練への援助を増やすことによって不平等を解消しようと努めている。しかし、こうした要素が欠けた国々、特に英国と米国では、収入、財産、良好な機会の格差が劇的な拡大を見せており、グローバル化や技術進歩によって引き起こされた変化によって大きな損害を受けている人々の間に深い怒りを生み出している。彼らは、自分自身の運命を自分で決める力を取り戻し、国家主権を取り戻すという主張を始めるようになった。

米国、英国、その他の先進国が内向きになってきているが、グローバル化の時代はすぐに終わりを迎えるだろうという予測は余りにも悲観的だ。確かに、貿易の急拡大、国境を超えた資本移動の増加、そして何よりも新しい技術の拡散が世界経済を変えている。こうした事は困難な課題を生み出し、国々は経済成長と生産性向上に努める一方、不平等を減らし、良い仕事を増やすことに苦闘し続けるだろう。






しかし、そこにはまた、膨大な機会が存在している。振り子を古い枠組みに戻すことは不可能だ。課題となっている事は、上手く作用する新しい枠組みを作る事だ。保護主義とナショナリズムの旗を振る事は、少なくとも一時的には大衆の支持を引き付けるかもしれない。しかし、歴史が示しているように、究極的には、それは世界の平和と繁栄を脅かす可能性が高い。米国、中国、そしてその他の世界中の多くの国々にとっては、現在のグローバル秩序を改善し、より持続可能なグローバル化への道を見つけることが出来るなら、その方がグローバル化を完全に引き裂いてしまうよりはるかに良い結果を生み出すことになるだろう。

米外交問題評議会会長のリチャード・ハース氏は、今年(2018年)1月1日に掲載された日経新聞のインタビュー記事の中で、欧米でポピュリストが支持される理由について「欧州では移民への反発が主因だが、米国では賃金伸び悩みや格差拡大への不満が大きいように思う。本当は技術革新への適応力が試されているのに、貿易や移民をスケープゴートにしている」と話し、グローバル化に関しては「グローバル化は新たな雇用や投資を生み出す一方で、人々に痛みも強いる。それは技術革新も同じだろう。グローバル化の進展を予見とし、どう対処するのかを考えるしかない」としています。






わが国では国債発行増による痛みの先送りの効果など様々な要因により、いまのところアメリカやヨーロッパで見られるような問題は表面化していませんが、グローバル化と言うよりもデジタル技術の革新を始めとした技術革新により仕事内容が変化し、対応できない人が増加する事は十分予想され、超高齢化社会の到来もあって、社会全体での貧富の格差がさらに拡大する可能性は否定できません。

著者が薦める北欧型の対応は、消費税10%への引き上げですら抵抗が強い日本社会では難しく、再教育によって高い所得を得られる新たな仕事に就くという考えも、理屈としては納得できるが、現実に中高年の方々に強いるのは難しいだろう、というのがFA研究会参加者の大方の意見でした。しかし、富の再配分システムの再構築や教育訓練の方法など、北欧諸国のやり方を参考としつつ、日本型の新たなシステム作りが急がれているという事は間違いなさそうです。



第35回FA研究会・忘年会参加者





報告者 小川哲夫(7期)


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