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【第37回 Foreign Affairs 研究会報告】
(2018/12/19)

2018年12月19日 | 活動報告 昨日(2018年12月18日)午後6時から、学士会館の会議室において、第37回のForeign Affairs(FA)研究会が開催され、10名が参加されました。

今回は『Foreign Affairs』誌の5/6月号から、「Globalization Is Not in Retreat」(グローバル化は後退しているわけではない)の論文が取り上げられ、今回も小川哲夫さん(7期)がレポーターとなり、難しい英語の論文を分かりやすく翻訳していただき、丁寧に解説してくださいました。また、この論文に関連した記事「How the U.S. Can Play Cyber-Offense」を宮地さん(29期)が翻訳され、解説してくださいました。



論文を解説する小川さん


内容の詳細は下の小川さんの報告を参照していただきたいのですが、アメリカと中国の貿易戦争、NAFTAの見直しなど、保護貿易の動きが強まる中で、グローバル化の中身は変化しているがグローバル化の動きそのものは変わらないという内容のものでした。また、デジタル化によりグローバル化の新しい時代に入っているが、サイバー攻撃について宮地さんから補足説明をしていただきました。



補足説明をする宮地さん

 

FA研究会風景


FA研究会のあと同じ場所で忘年会を兼ねた食事会がありました。忘年会ではデジタル化はどこまで進むか、AI、自動運転など、話はつきませんでした。

 

乾杯スピーチをする川内さん


美味しい中華料理での歓談は続き、午後9時頃お開きとなりました。小川さん、宮地さん、特別の翻訳、ありがとうございました。

報告者 菅野妙子(MBI)


第37回FA研究会のテーマ「Globalization is not in retreat(グローバル化は後退している訳ではない)」の概要は以下の通りですのでご紹介します。

1年前の第35回FA研究会でもグローバル化をテーマとした論文「Why Globalization Stalled(なぜグローバル化は立ち往生しているのか)」を取り上げました。一見すると異なった見解が示されているのではないかと思われるかも知れませんが、そうではなく、グローバル化の現状を異なった角度から分析したものです。グローバル化の課題や意義については一致していますので、両者を合わせてお読み頂く事をお勧めします。今回取り上げた論文の著者の一人はマッキンゼーのパートナーで、マッキンゼー・グローバル・インスティテュートのリーダーを務めるSusan Lund 氏で、グローバル化について多くの情報発信をされています。




2008年の金融危機とそれに続く景気後退はサービスや商品貿易の急激な成長に終わりをもたらし、国境を越えた金融の流れも大きく落ち込んでいる。貿易はウィンウィンの関係だと言う固い理解は、ゼロサム関係だと言う考えや、より高い貿易障壁を構築すべきとする考えに道を譲る様になってきている。そうした意味では、グローバル化は後退していると言える。しかし、実際にはグローバル化はこれまでとは異なる道をたどり前進し続けている。過去のグローバル化は貿易を基礎とし、西欧主導のものだったが、今日のグローバル化はデジタル技術に引っ張られ、次第に中国や新興経済国主導のものとなってきている。

安い労働力を利用するグローバルなサプライチェーンに基づく貿易が減速してきている一方で、新しいデジタル技術により、スモールビジネスから多国籍企業まで、かってないほど多くの主体が国境を越えた商取引に参加することが出来るようになっている。グローバル化は非グローバル化に道を譲ったのではなく、単に異なった段階に入っていると言うことだ。




この新しい時代は、イノベーションや生産性を高め、人々にかってないような情報へのアクセスを提供し、世界中の消費者と供給者を結びつけると言う、経済的、社会的な利益をもたらすだろう。しかし、同時に破壊的な側面もある。ある分野が消え去った後にはある種の仕事はなくなるだろうし、新たな勝者が生まれる事になるだろう。恩恵は明らかで重要だが、対応すべき課題もかなりのものだろう。企業も政府も来るべき破壊的な動きに対する準備をしなければならない。

グローバル化は後退してはいない。デジタルを土台とし、地政学を変えながら、姿を変えたグローバル化の新バージョンが既に姿を現している。すぐ前の時代には、グローバル化は対立する勢力の戦いの場となっていた。一方は恩恵を最も受けていた政治やビジネスのエリートであり、他方は最も被害を受けていた労働者と地域社会だ。

しかし、この二つのグループの間でグローバル化が生み出す効果や影響について激しい議論が行われていた間に、グローバル化自身は速やかに進んでいた。グローバル化の新たな、デジタル化した形が勢いを増しているのにも関わらず、今もグローバル化の雇用や不平等化に与える影響についての議論が続いている。

今は、古い議論をほじくり返す事よりもむしろ、グローバル化の新しい時代の現実を受け入れ、それによる利益を最大化し、コストを最小化し、得るものを広く配分するように努力する時ではないだろうか。そうする事によって初めて明るい展望が現実のものになるのだ。





以上ですが、より具体的な論点をお知りになりたい方は、論文全体をお読みください。
米国のトランプ政権の誕生と「アメリカファースト」を主張する国際協調無視の外交政策実施、経済の急成長、国力の高まりを背景に自己主張を隠さなくなった習近平主席指導の中国と米国との対立、米国、EU各国内での分断の深化などを見ていると、本論文の著者をはじめ、識者が言うような分配政策の改善、教育の充実による変化への対応努力が実現し、グローバル化の負の部分が払拭できると楽観的に考えるのは難しいと思います。それでもグローバル化は進展するのでしょう。まずは「隗より始めよ」という事で、国内での政策対応に期待したいものです。




第37回FA研究会・忘年会参加者


報告者 小川哲夫(7期)



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