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「トランプ政権の内政外交および対日政策」 (2017年6月20日)
第30回MBI同窓会オフィシャル・イベント報告
「トランプ政権の内政外交および対日政策」


講演者:久保 文明 氏
    東京大学法学部・法学政治学研究科 教授
日 時: 2017年6月20日 18:00〜21:00
会場:学士会館(203号室)



講演する久保文明氏

 去る6月17日、学士会館(東京・千代田区)において、第30回のMBI同窓会オフィシャル・イベントが開催されました。今回がMBI同窓会オフィシャル・イベント最後ということと、タイムリーなトピックということもあり、約50名ものMBI卒業生が参加されました。今回の講演会は、MBI Foreign Affairs 研究会の提案で実現しました。
 講演に先立ち、2017年度のMBI同窓会会長の二ツ木英則さん(29期)から挨拶がありました。




司会(オフィシャル・イベント委員長)の川内清隆さん(4期)



挨拶するMBI同窓会会長の二ツ木英則さん

 今回の講師は、アメリカ政治研究の第一人者である東京大学法学部・法学政治学研究科教授の久保文明氏です。久保教授のご専門はアメリカ政治、アメリカ政治外交史で、現代アメリカの政党政治、政策形成過程、内政と外交の連関などを研究されています。主な著書に『アメリカ政治 第3版』(有斐閣)、『アメリカの政治』(弘文堂)、『超大国アメリカの素顔』(ウェッジ)、『アメリカ外交の諸潮流――リベラルから保守まで』(日本国際問題研究所)、『オバマ政治を採点する』など、その他多くのアメリカ政治に関するものがあります。



講演会風景


 トランプ政権が発足して5カ月が経過しましたが、いまだに政治・経済・外交などに混乱もあり、トランプ大統領の動向には世界中の注目が集まっています。今回の講演で、久保教授には、なぜトランプ氏が当選したか、その政策や政権の性格について、日米関係を含めて大変興味深く分析していただきました。以下の項目について講演していただきました。(MBI会員は、会員制サイトの「MBI Plaza」から講演資料をダウンロードできます。)

【講演項目】
1.アメリカ政治・経済の現状
2.2016年大統領選挙の特徴
3.トランプ支持者のプロフィール
4.クリントンとトランプ
5.本選挙の展開(全国党大会から投票日まで)
6.選挙結果と新政権誕生に向けて
7.トランプ政権人事
8.トランプ大統領/トランプ政権を考える
9.トランプ政権の政策
10.トランプ政権と日米関係
11.終わりに





講演会風景

 講演後の質疑応答も活発に行われました。











質疑応答風景

 2時間の講演会はあっという間に経ち、質疑応答は懇談会でも久保教授を囲み続きました。また、懇談会では久しぶりに再会したMBI仲間たちと旧交を温めました。



乾杯スピーチをするForeign Affairs研究会代表の小川哲夫さん(7期)





























懇談会風景



仲間との語らいは楽しい

最後に久保教授を囲み、記念撮影をしてお開きとなりました。



久保教授を囲んで記念撮影

報告:菅野妙子
写真撮影:菅野妙子

≪参加者コメント≫

●なぜトランプ氏が大統領に選ばれたのか、という疑問がありました。高卒白人男性の支持を取り付けたのが大きいというのはあったのでしょうが、私の1970年代のアメリカ滞在時の体験からすると、少しピンときませんでした。多分、40数年以前と、現在の日本とアメリカとの関係が変化しているのが大きいのではないかと思いました。また、トランプ大統領は政治経験はないが、話し言葉は明瞭で、聴衆の理解は得やすいし、ビジネス分野での大成功物語もありますので、おそらく経済的な社会基盤に立って、高卒白人男性にも何かを変えてくれるのではないかと期待を持たせたのだと思います。

●豊富なデータに裏付けられた、分かり易い解説でした。漠然と感じていたイメージが証明された気がしました。共和党のメンバーがトランプをどう捉えているのかについて、もう少し伺えたらと思いました。

●久保教授の歯切れのよいご講演、有難うございました。日本は2060年に人口8,000万人と予測され、5,600万人の就業人口の65%が年収260万円以下、6人に一人の子供が食事にさえ困窮している。今後進学率も下がると予測すれば、米国の高卒以下の白人層が"トランプ現象"を作りだした訳で、今後日本も"トランプ現象"が出現するのではと実感しました。それと日本の課題は中国人の侵食で、既に銀座はチャイナの街となり、北海道の土地は1/3が買い取られていると言われています。きっと気が付けばあらゆる面で中国人に占められてしまうのではと気になります。「ハワイまで中国圏」となる日も近いのでは、と恐れています。そのような危機感を打破するには世界に通じる人材を育てられるかだと思っています。

●大統領選挙でトランプ氏がいかにして勝利し、クリントン氏が敗北を喫したかを資料を駆使し簡にして要を得た説明で提示され、大いに納得しました。特に彼の支持者のプロフィールは卓越しており、白人労働者が経済的に苦境に立ち黒人やヒスパニックの下に追いやられるような立場で、この不遇を誰に訴えたらよいかと考えたとき、彼が寄りそったことを高く評価した点が大きいとのご指摘は、説得的であります(オハイオのサイオトー郡の事例は目を見張ります)。また紹介された出口調査の結果は極めて印象的で納得出来ます。彼の3点セットを紹介されましたが、これらは偏えに「アンチ・オバマ」であるような気がします。リベラルなオバマに対し、彼は超保守派の立場を鮮明にし、これらだけを声高に叫ぶという選挙戦術が功を奏したともいえそうです。この動きに対し、クリントン氏はこうした大きな変化の波を察知出来ずにいたことが「失敗の本質」なのでしょう。

トランプ氏の矢継ぎ早やの「大統領令」発布で目くらましに遭った感がありますが、久保先生が指摘しているように、日本と異なり米国では議会が立法府を司り、たとえ大統領といえども議会対策を施さない限り権限を発揮することは出来ないということで、選挙公約を実施することは容易ではない状況であり、支持者をいつまでつなぎとめられるかが問題と考えられます(なかなか事態が思うように動かないと彼は投げ出すかも?)。これから閣僚や官僚を含め部下を使いこなし実効を上げることが出来るか、が大いに注目されます

幸いにして我が安倍首相は彼と波長が合ったのか訪米時に大いに歓待されたとの報道があり結構なことではありますが、日米関係が実務レベルでも如何に緊密に維持されるかが大き課題になります。彼がどこまで日本を支持しこちらの想いを「忖度」してくれるかは彼の胸三寸にかかっていると言えそうです。
                                   
●久保先生の講演を聴いて私なりに以下のように理解しました。
1.民主主義が機能した。今までEstablishmentに支持されていた大統領に対し、貧しい白人やEstablishmentに反感を持つ人達(アメリカの50%の人達)の気持ちをくみ取る大統領を選出するメカニズムが機能した。これが民主主義。トランプ大統領はこのことを理解しているから「支持」を失わないように努力する。
2.大統領の権限は適度に制約されている。議会との関係、司法機関との関係で憲法上、実務上、大統領の権限は制約されていて、トランプ大統領でも「独裁」が行われることはない。
3.成功した企業家のトランプ大統領はうまくやるか?成功した企業家の一般的な特徴は、@どうすれば利益を獲得できるかについて "するどいカン"がある。Aそのためには原理原則に拘らない。B利益を獲得するための"Deal"をうまくやることが行動指針。Cうまくやるための努力を惜しまない。企業家だった大統領にとってアメリカの利益を求めるアメリカ・ファーストは当然のことであり、企業家としての"カン"と努力(勉強、考えの修正など)で結果オーライになるか。

●講演会の議題が正に時機に適っており大変興味深く拝聴致しました。世界一の大国にこのような奇妙な大統領を迎え、全世界が困惑しています。今後どのような展開になるのかが見ものです。是非、今後も時機を見てこのような企画を期待致します。

●トランプ政権誕生の背景、政策権限と限界等を具体的なデータを踏まえて説明されており、分かり易くかつ新たな知見を得ることができた。

●『Hillbilly Elegy』を読んでいましたので、データを見せていただき分断された社会を実感しました。やはり成熟社会は分配政策をどのように行うかが社会安定の鍵になると思いました。日本も貧困の継承が問題になっており、それを正すべき第一歩の歳出改革の必要性が高まっているにもかかわらず、動きは見えません。率先して改革すべき公的部門(含む議員諸侯)は人件費すら削ろうとしていません。H29予算書では公的分野の従事者は287.8万人、人件費総額26.6兆円一人当たり人件費924万円となっています。20%削れば5.2兆円です。全額給与ではないものの。雇用者の平均給与所得が420万円くらいと比較するといかにこの国が国民への配分を無視しているかわかります。

米国の外交を担う主流は恐露病(Russophobia)にでも罹患しているのでは、と疑ってしまいます。トランプ大統領は親露姿勢が明確だったにもかかわらず、現在は伝統的な米国国務省(Establishment)に外交はTake overされた印象です。確かに中欧各国は生々しい記憶があり、独・露への本能的恐怖感があるのは十分理解できますが、経済規模では十五分の一程度の露西亜をそこまで敵視する事は、いかに冷戦のトラウマが残っていても、やはり不可解です。

加えてパリ協定の離脱(大統領の独断であっても)という国策を発動し、欧州とギクシャクした関係になっている現在、国務省中心に対露制裁強化を打ち出せば、露西亜と米国同盟国(欧州)の間での緊張感は高まり、欧州は自らのエネルギー安全保障と安全保障のため、ドイツを中心に露西亜との接近を図る可能性も予見されます。米国は制裁を強める事で、欧州と露西亜の接近を許し、米国が嫌う強いユーラシアが出来る可能性があります。

国務省は長官を含め面従背腹をし、国益を損ねる危険性を侵してでも、トランプ行政府の失策を作り、大統領を無力化したいのでしょうか?大統領はそこまで官僚群(Establishment)から疎んじられているのでしょうか?もしそうであれば副大統領以下による宮廷クーデターもありえるのでしょうか?

●選んだ以上大統領にとりあえず任せることのできる米国の強さや巾を感じました。トランプ氏を大統領ではなく企業の社長と思うと、意外と納得できます。日本でも同じようなことが起きることはなさそうですが、どうでしょうか?日本に伝わってこない情報や見方を教えていただき、ありがとうございました。

●トランプ旋風のバックグラウンドを分かり易く説明していただきました。今後のアメリカの方向を感じることができました。

●高卒白人男性のパワーとか選挙結果の詳しい分析が的確で、大変良く理解できました。米国がどこに向かうのか予測が難しいことも良くわかりましたが、予測がつきにくければ対策の立てようがないわけで、米国の将来が良い方向に収斂していくのを期待したいと思います。こうした状況下においては、日本の立ち位置、日本の政治のあるべき姿をしっかりと、多面的に、したたかに考えるべき時ではないでしょうか。米国の現状は近い将来の日本を暗示しているようにも見えます。日本においては米国の高卒白人男性に相当するのは例えばフリーター、あるいは恵まれない女性層のような気がします。

●学者とマスコミ等の深さの違いを感じさせられるセミナーでした。調査研究に裏付けられた知見に基づく見解は納得感があります。それにしても、米国の大統領制や議会の仕組みの違いを改めて認識させていただき、大変、有益でした。その理解なしに、マスコミ記事だけをみていては間違うという思いを新たにいたしました。その知見をもってしても予測可能性が低いトランプという人が米国大統領とは、やや心配になります。本企画をされた関係者に感謝いたします。ありがとうございました。

●新聞・報道などでいつもイライラさせられるトランプ大統領とアメリカ政治について、時宜を得た講演を拝聴でき大変参考になりました。しかし、アメリカ政治がご専門の久保先生でもトランプの規則・無規則には当惑させられているのかなという印象も受けました。やんちゃ小僧が大統領になるんだと我儘を言っていたら、本当になってしまって、その後はどうしよう、と当惑しているのかなと思っておりました。でも彼が表に出てくる世相背景がアメリカに醸成されてきていたということが、factベースで理解できました。戦後70年続いている世界の協調体制が明らかに綻びだしていることは、間違いありませんね。

●久保先生の素晴らしい分析に感銘しました。時間があれば「China 2045」に関するアメリカ政界の理解度(特にトランプ政権の考え方)について伺いたかったです。

●世界の不安を自ら作りだしている、トランプ大統領をアメリカ人は早く辞めさせることができないものか期待していましたが、米国制度の下では相当困難な課題であることを伺い、落胆しています。黒人陪審員の報復殺害に目をつぶったと自ら口外したことのある、セッションズ司法長官のような人物をはじめ、人権や環境権などを軽視しているような人物が登用される政権に恐ろしさすら感じています。トランプの価値観に人権という一言が加われば、国の内外で米国の魅力が増し、中国などに対しても交渉力を増すことになることは明らかです。我慢強く、変身が得意なトランプが人権擁護を語り始めることを待ちたいと思いました。

●時宜を得た演題で興味津々で参加しました。これからどちらに転ぶか分からない政権なので、我々ミーハーは"大予言"的なものも期待しましたが、それは無理。しかし、おかげで政権誕生の背景から対日政策まで現在の状況を体系的によく理解できました。オバマ政権も「チェンジ」をかかげて誕生し、どうなるかと心配しましたが、今度はさらにその上と言ったところです。アメリカ合衆国の「自浄能力」がこれからどう効いてくるのか、結果を見てみたいものです。いずれにしろ子孫のためにも世界平和が永続することを願うのみです。

●トランプ政権の誕生の背景、その後の動きなどについてデータに基づいて客観的に分析、説明していただき理解が深まりました。そして忘れていた出来事、見落としていた視点、知らなかった事実について再認識できました。その点で極めて有意義な講義を拝聴でき、感謝しています。なおジャーナリストではないので無理なことと思いますが、できればアメリカの本質的な問題点について主観的なご意見が聞ければ一層興味深かったように感じました。

●トランプが大統領になってから毎日のように物議を醸し出しているように感じていましたので、政権が成立してから早5カ月が経過していることに気が付かされました。彼を今も支え続けている中西部のメジャーな白人男性たちを思うと、昔読んだ『アラバマ物語』の事を思い出します。排他的でマッチョ信奉、狭い了見、ちょっと手に負えない気がしますが、権力は持っている・・・。退任は起こりがたく、不毛の在任期間、4年間の実質米国抜きの世界。日本は米国の意向をおもんぱかることを遮断して、自立した世界戦略を自らの頭で立てざるを得ない、ラッキーな期間だと考えたい。

●トランプ大統領の当選の背景は多々聞くことがあったので、それを確認した。今後の動向について独断と偏見でも構わないので、聞きたかった気がします。欧州の動きとの関係の有無、同質、異質性に関する分析もあれば聞きたかったが、大変時宜を得た企画でよかった。

●久保先生はアメリカ政治・外交史を専攻とのことで、普段のマスコミ報道より深い分析があり、納得する内容でした。特に、民主ー共和両党の「3連勝」する難しさ(チェンジ志向)、「トランプ大統領の資質・性格」−予測不可能な動きについては、説明されてよく分かりました。私が強く印象に残った点は次の2つです。
@アメリカの三権分立体制は、本物であり、大統領の勝手な判断を許さない。(不法移民)
Aアメリカという国は懐が深い。映画俳優のレーガンも大統領になったし、オバマは黒人初めてだし、下品で粗野なトランプ(最初は泡沫候補)でも当選させる。

●トランプ政権を誕生させた米国社会の変化がよく理解できました。また、現在の政権内の政策決定・人間関係等がいかにまだ混迷を続けているか、改めて知ることができ、驚きでした。結論として、まだまだ先が読めない、というのが現状と感じました。

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