第1話 (8.21.2004)
「欧州のバリアフリー」


私はあと3カ月で63歳となります。
今年の6月にNECを退職するまで死語になりつつある
"企業戦士"として欧州事業に従事してまいりました。

欧州は英国・アイルランドを除き国境を接して様々な国
が存在していますが、言語がそれぞれの国で異なり、
いきおい文化も異なります。
しかしながら、共通していることは、
福祉に対する考え方が日本よりも数段進んでいることです。
最近でこそ日本は「バリアフリー」という言葉が
国民の間で使われておりますが、欧州においては
20年以上前から当然のごとく使用されております。

私自身、英国・スウェーデン・ドイツと通算15年の駐在
をしてきましたが、当時の私は極めて健康体であり、
バリアーフリーそのものへの関心は極めて薄いものでした。

2002年5月に日本へ帰国してから、足の不調に悩まされ
病院巡りをした後、昨年の5月に筋萎縮性側策硬化症
(ALS)との診断が下りました。

運動神経が死滅する難病で、筋肉が衰退し、
全身にその症状が進行するやっかいなものです。
目下のところ西洋医学では原因が判明しておらず、
従い薬もなければ治療方法もありません。
座して症状の進行を待つだけです。
私の症状は右足から始まり、現在は左足にも及び、
今年の初めから車椅子のお世話になっています。

そうなってみて初めて、
日本のバリアフリーの状況との比較において
欧州は見事に整備されていたなあ〜と感じる次第です。

例えば、英国では東京駅や上野駅のような主要な鉄道駅では
プラットホームまで車で入れるようになっています。
また、スウェーデンでは市内循環バスは車椅子のまま乗車
出来るようになっています。

欧州のバリアフリーが確立されている証明に
車椅子の方を街中、例えば銀座とか六本木のような所で
しばしば見受けます。
日本ではどうでしょうか?
少なくても私はほとんどといってよいくらいみかけておりません。

欧州の国民の間では弱者保護の精神が培われています。
例えば、今から23年前、家族とともに初めて英国に駐在しました。
最初の週末に家族揃って買い物に出かけました。
とあるデパートの前の歩道に人だかりがしていました。
何事であろうと覗いてみると、
人の輪の中心に傷ついた小鳥が横たわっていました。
一人の中年女性が自分の絹のハンカチを出して、
その小鳥にハンカチを掛けていました。
まさにフトンを小鳥に掛けるように。
しばらくすると、救急車のサイレンとともに救急車が近づいてくると、
人の輪から一斉に拍手と歓声が起こりました。

私は何故人々が拍手をしているのか理解出来ませんでした。
すると救急車は我らの前で止まり、
その小鳥を抱えて去って行ったのです。
この光景は私のみならず、家内と当時幼児と小学生であった2人の娘に
強烈な感動を与えました。

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