第3話 (8.24.2004)
「五体不満足」


1998年無名の身体障害者、乙武洋匡氏(当時22歳)が
『五体不満足』と題する本を出版し、
超500万部のベストセラーとなり
一躍世間の脚光を浴びるようになりました。
その後、早稲田大学を卒業しスポーツライターとして
現在も第一線で活躍しています。

先日、古館一郎氏司会の「おしゃれ関係」に乙武氏が出演していました。
彼は電動式車椅子に乗りTVスタジオに登場。
古舘氏の依頼で彼の自家用車が紹介されました。

乙武氏の説明によるとアメリカで改造したとのこと。
彼の障害ハンデをCoverする驚異的な障害者用の車です。
車への乗り降りは車の後方から
電動式車椅子ごと出入りできるようになっています。

運転は肩の付け根にある手と、口を酷使して行うものです。
彼の類まれな精神力と能力をして
これらの近代技術を酷使した車を購入することが出来たのでしょうが、
『五体不満足』という本に多くの日本人が共感を覚えなければ
彼の精神力も能力も開花することはなかったでしょう。

いずれにしても五体不満足の状態でここまで明るく、
素直にそして健常者を上回る才能を発揮する
彼の底知れぬ精神力の強さは尊敬に値します。

一方で、彼はまさに五体という切り口からは
極めて不遇な状態でこの世に生を受けたわけですが、
切り口を変えて見ると
彼はこれ以上彼の五体は悪化することはありません。

8月21日(土)NHKで
「難病と告知」と題するドキュメンタリーを観ました。
2人の男女のALS患者を対象として
神経内科医師の15年前の経験を踏まえ、
難病患者に事実を告知すべきか否かを問うドキュメンタリーでした。

2人の患者はともに症状が進行し、
呼吸困難な状態に近いうちに陥る。
人口呼吸器を喉を切開し取り付けるか否か患者は選択を迫られる。
男性患者は健康時、社交ダンスの名手であり、
人工呼吸器を取り付けてまで生き続けたいとは思わない。
死んでしまいたいと。
医師の話は人工呼吸器を取り付けても年単位の延命は確約できない。
半年の延命は約束できると。
同病である私は見ていて涙が止まらなかった。
明日は我が身です。

日々、着実に運動神経が死滅し筋肉が衰えてゆくさまを、
なすすべも無くただただ座して暮らす。
今は両足が不自由なだけだが、
いつか両手も不自由となり、
また呼吸器系を犯されれば呼吸困難となる。
いつ訪れるかも知れない死。
しかも即死ではなくジワジワと人体が蝕まれての死。
火あぶりの刑よりも辛い。

自分の来年、再来年の姿を想像すると
明日に向かって生きる気力が萎えてしまう。
私は明日は考えず、今日一日を楽しく、
悔いの残らないよう出来ることを精一杯やるとの信条に変えました。

まず、下肢障害で移動が自力では不可能な私は、
足を使わずに手で運転が出来る障害者用の車を購入しました。
通常の車にハンドコントロールという特殊装置を取り付けるものです。
この車を今年の1月に購入しましたが、
既に1万キロ近く走っています。

家内はボランテア的な活動をしているので、あちこちへ出かけますが、
私は家内のアッシー君になっています。
足の不自由な私がアッシー君というのも皮肉な巡り会わせですが。
現役時代は企業戦士として
欧州出張とか単身欧州駐在とかで家を留守がちでした。

東京以外ほとんど知らない我等夫婦で、
これからは、この車を使って日本全国を旅して回りたいと思っています。
腕が萎える前に。

車椅子よりの目線トップページへ  トップページへ