第43話 (6.3.2006)
「老人福祉施設に短期滞在」


先月末から江戸川区の老人福祉施設に
二泊三日の短期滞在をしました。

利用者は60名ほどで
介護士さんの話によりますと、
全員が70歳以上の高齢者で、
程度の差こそあれ認知症を患っておられ、
私のように、
首から上は健常者という利用者は
皆無とのことでした。
利用者の半数以上が車椅子利用者です。

朝6時起床、8時朝食、12時昼食、
3時におやつ、6時夕食、9時消灯です。

食事の内容は1400〜1500カロリーの薄味で
量も少なく病院食。
飲酒は禁止、
喫煙は指定された場所のみ許されています。

食事は食堂で全員揃っていただきますが
1/3程度の方は自力で食事が摂れず、
介護士の方に食べさせてもらっています。
食事が喉を通らずにむせて咳き込み
介護士さんに背中を叩いてもらっている方もいますし、
中には食欲がないのか
介護士さんが口元にスプーンで持ってきた食べ物を
顔を振って拒んでいる人もいます。
入れ歯を自力で出し入れ出来ず
介護士さんに手伝ってもらっている人もいます。

四人で一つのテーブルを囲み
食事をするわけですが、
会話は全くなされません。
目があっても挨拶も無しです。

総じて言えることは、
皆さんの顔に表情は無く、
生気がありません。
目がうつろで焦点が定まっておりません。
私自身、首から下はダルマ状態ですが、
首から上は健常者ですので
この環境下、
雰囲気で食事をするには限界を感じました。

ここの介護士さんは20名ほどおられるそうですが、
大半が20歳代の女性です。
孫がおじいちゃん、
おばあちゃんの世話をしている構図です。
皆さん明るく、
仕事にハリを持ってやられているように感じました。
ですから、利用者の皆さんに生気が感じられないのは
介護士の方の問題ではないといえます。

「人間が生きるということはどんなことなのか」
を改めてこの二泊三日で考えさせられました。

私の病気(筋萎縮性即索硬化症、ALS)は
発病後3〜5年で呼吸困難となり
寿命が尽きるといわれております。
ホーキンス博士のように
人工呼吸器を装着することで何年かの延命は可能です。

元モルガン信託銀行社長の鳥羽 修氏が
文芸春秋に、ALS患者の声と題して
私見を述べておられます。
彼はALSの告知を受け、
いろいろ考えた末に延命措置をしない決断をしました。
同氏曰く、
ALSに直面する患者の状況は千差万別で、
問題の対処の仕方はみな違う。
要は、延命措置で生き延びた時の生活の質(QOL)を
自然死の選択と対比して、
且つ、自分の年齢、これまでの人生の達成感、
死生観に照らしてどう考えるかの問題だ。

私は彼の意見に同感です。
そして、私も延命措置をしない決断をしております。

二泊三日の短期滞在を通じて
私の決断は一層揺るぎのないものになった気がします。
何ヵ月後か何年後かに
呼吸器官の障害に直面するかも知れませんが
それまで、精一杯前向きに生き続けようと思っております。


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